細野研HP

Research topic

① 越境大気汚染が日本列島に及ぼす影響評価
Evaluation for trans-boundary atmospheric pollution in Japan archipelago using sediment core from mountain lakes and rain water network samples

内容紹介
 流域水循環系の枠組みにおいて、まず大気降下物の特徴やその変化を理解することが重要となります。特に顕著な変化が示唆されその理解が急務となっている、大陸から飛来する越境大気汚染物質の列島に及ぼす影響に注目しています。本研究では、長期にわたる試料に乏しい降水の情報ではなく、大気降下物の質的変化を保存していると考えられる高山湖沼堆積物の情報を抽出することで、越境大気汚染史を100 ~数百年程度遡って解読しています。210Pbや137Csを用いた堆積年代推定、微量元素ならびに放射性起源安定同位体起源トレーサー(87Sr, 204Pb, 206Pb, 207Pb, 208Pb)を用い、2008年~2010年の間全国から採取されたアーカイブス試料の解析を進めています。
 2008年の研究当初はどの湖沼から手を付けて良いか手探り状態でしたが、全国を北から南まで調査し、現在では列島を最低限カバーする試料を揃えることができたと思っています。また、熊本大学の一柳先生が中心となって2013年~2014年に一年間かけて全国で採水された降水の水質特徴をデータベース化し、堆積物から得られたデータ解析に上手く用いたいと計画しています。研究には熊本大学水文学研究室設置の誘導結合プラズマ質量分析計(ICPMS)を用います。近い将来、環境モニタリング拠点としての特定湖沼の提案を行い、更には中国、韓国、台湾を含めた東アジア地域にまで範囲を広げ、国際共通認識へと発展させることが望ましいと考えています。
研究資金
H21-25年度 振興調整費(テニュア・トラック資金)(代表)
H26-28年度 科学研究費補助金挑戦的萌芽研(代表)
学外の研究協力関係
名古屋大学、JUMSTEC、高知大学海洋コア総合研究センター、岡山大学、愛媛大学、関西学院大学、国立台湾大学

② 流域表層における風化現象およびCO2バッファー能力の評価
Study for chemical weathering process in the watershed surface environments evaluating its CO2 buffering availability

内容紹介
 いわゆる“化学風化”現象の実態解明と、風化反応を通した流域CO2バッファー能力の評価を行う研究です。2012年頃からドイツHamburg大学のJens Hartmann教授の研究グループと共同研究の計画を立て、2014年3月に阿蘇カルデラ内流域で調査を開始したのが研究開始のきっかけです。細野研にとっては比較的日の浅いテーマだといえます。Hartmann教授らが提唱した全球モデルによると南九州は世界でも風化促進が顕著な地域です。しかし、モデルを説明する観点からの詳細なプロセス研究はまだ始まったばかりで、阿蘇地域における我々の研究はこの足がかりとして世界の第一線で活躍する化学風化研究グループからも熱い視線を注がれています。
 研究室にはThermo Fisher Delta V Advantageが2台、Picarroが1台、ICPMSが一台の、合計4台の質量分析装置が設置されています。まずは阿蘇カルデラ内の流域において河川水や湧水の採水を行い、各種主要イオン濃度や微量元素濃度の分析、ならびに各種同位体分析(酸素、水素、窒素、炭素、硫黄、リチウム、ボロン、ケイ素)をドイツ、フランス、ベルギー、アメリカの研究機関と共同で行っています。また、カラムを用いた岩石や堆積物の風化模擬実験を通し、化学風化の定量評価から共同研究を進めています。
研究資金
H26-  熊本大学自然科学研究科国際共同拠点(学内プロジェクト)など
学外共同研究
ドイツ・ハンブルグ大学、フランスIPGD(Institut de Physique du Globe de Paris)、ベルギー・ルーヴァン大学、アメリカ・サウスカルフォルニア大学、東京大学大学院理学系研究科

③ 不飽和帯での水および物質挙動の解明
Elucidating transportation rates and behaviors of water and materials in unsaturated zone

内容紹介
 不飽和帯における水は井戸水のように容易に手に取ることができないので、その動きを把握することは思ったよりも難しいものです。不飽和帯における水を抽出するためには水を使わない不攪乱土壌掘削機により土壌を採取し、土壌中の土壌水や間隙水を抽出するといった方法があります。かつては土壌水中のトリチウムを年代マーカーとして利用できましたが、現在では濃度が薄いためにこの方法は利用できません。研究室にて酸素・水素安定同位体比を測定し、鉛直パターンと降水データの季節変化パターンを比較検討することで鉛直流れの速度を推定しています(もっと良い方法があればいいのですが)。
 帯水層中の地下水の流れや水質変化の実態は井戸から採取した点のデータを三次元的に広げて解析することができますが、不飽和帯中の水は容易には手にすることができないため、一体どの程度の汚染蓄積がありそれがどの程度の時間遅れを伴って帯水層へと到達するのかが良くわかっていないのです。このため、水が涵養された先にある帯水層地下水に対して今後の汚染動向を読み取ることが難しくなり、地下水管理や対策の観点における現在の重要な関心事となっています。柱状堆積物を扱う地道な作業ですが、地下水研究における一つのブラックボックスを解き明かすという目的は重要であり、面白い謎解きだと言えるでしょう。
研究資金
H22-27年度 科学技術振興機構(CREST)
H26, 27 年度 熊本県委託事業
学外との研究協力関係
熊本県、岩手大学農学部

④ 山体湧水および帯水層地下水の流動年代ならびに水質進化機構の解明
Investigation for residence time and hydrochemical evolutions of spring and groundwater

内容紹介
 水に溶存するクロロフロロカーボン(CFCs)、六フッ化硫黄(FS6)、クリプトン(85Kr)を測定することで山体湧水や帯水層地下水の涵養年代を推定する研究が進められています。また、地下水流動モデルを用い、地表下における水の動きを可視化する研究が盛んです。細野研では求められた年代や流動の情報を軸に、化学風化反応速度や水質進化メカニズムを詳細レベルで解明する新たな試みに挑戦しています。地下における風化現象が果たすCO2吸収能力の評価や、ミネラルウォーター形成メカニズムに対して、これまで分かってこなかった実態が明らかになってくると期待しています。年代関する分析・解析は他大学の研究者との密な連携を持っていますので、これについては共同で研究を進めています。
学外との研究協力関係
長崎大学

⑤ 地下水硝酸汚染の原因究明と自然浄化機能の解明
Study for groundwater nitrate pollution using multi-isotope (H, B, C, N, O, S, Sr) and computer simulation

内容紹介
 2006年頃から開始した、個人的にこれまで最も力を入れて研究してきたテーマです。研究を通し、流動に沿って採水した地下水の成分や多元素安定同位体比を用いて硝酸汚染の実態、原因、帯水層中における自然浄化機構の解明を目指してきました。中でも帯水層中の脱窒による自然浄化に注目しています。これと関連し、実験室における培養実験を通して窒素、硫黄、炭素同位体比の変化特性を利用した同位体方法論の構築も行ってきました。ラボでは脱窒菌法による硝酸イオン中の窒素と酸素の安定同位体比、BaSO4沈殿法による硫酸イオン中の硫黄と酸素の安定同位体比、リン酸法による重炭酸イオン中の炭素安定同位体比のガスベンチ分析がルーチン化されています。更に、帯水層中における硝酸の挙動を可視化するシミュレーションモデルの構築にも強い関心を持っており、現在熊本におけるモデルの構築を進めています。
 熊本地域での研究を通して研究方法論も整ってきました。また、これまで様々な国と地域で研究を行ってきました。今後は同地域におけるモニタリングを継続すると同時に、他の異なる水文地質条件を有する地域への応用を進めていきたいと考えています。より詳しくは、本HPのリストにある私の執筆した総説や総論をご覧ください。
研究資金
H20-23年度 科学研究費補助金若手研究A(代表)
H24-27年度 科学研究費補助金若手研究A(代表)
H22-27年度 科学技術振興機構(CREST)
学外共同研究(共同で論文作成したもののみ紹介)
北海道大学低温科学研究所、秋田大学工学資源学部、産業技術総合研究所、筑波大学流域環境センター、東京大学大気海洋研究所、京都大学生態学研究所、広島大学総合科学研究科、長崎大学水産学部、琉球大学農学部、イギリス・リーズ大学、スペイン・バルセロナ大学、アメリカ・フロリダ州立大学、アメリカ・アリゾナ州立大学、ブラジル・サンパウロ大学、韓国・国立ソウル大学、台湾・国立台湾大学、台湾・中央研究院、フィリピン・フィリピン大学、インドネシア・水資源局、タイ・水資源局、タイ・チュラロンコン大学

⑥ 地下水砒素汚染に対する生物地球化学的研究
Biogeochemical study for groundwater arsenic pollution

内容紹介
 硝酸性窒素と並び、地下水で汎世界的にみられる主要な水質汚染問題の一つです。汚染物質の漏出による局所的な問題も存在しますが、多くは帯水層中にある程度濃縮していた自然由来の砒素が溶出して広範で生じることが報告されています。砒素溶出の主要なメカニズムとして、帯水層が酸化的な環境に変化することで硫化鉱物中に含有されていた砒素が溶出する場合と、逆に還元的な環境下で水酸化鉄が溶出する際共沈していた砒素も一緒に溶出してしまう、といった主に二つのケースが考えられています。砒素溶出は広域流動系の一部で起こっている現象ですので、流域物質循環の概念に沿ってそのメカニズムを知ることが重要だと考えています。熊本地域や他のアジア地域における研究を通し、砒素汚染は流動末端の、脱窒により硝酸汚染が浄化されているような還元域で起こっているケースが多いことが分かってきました。今後は熊本地域で詳細なモデルを構築するとともに、他地域への応用を図っていきたいと計画しています。
研究資金
H17-22年度 総合地球環境学研究所プロジェクト
学外共同研究(共同で論文作成したもののみ紹介)
筑波大学流域環境センター、東京大学大気海洋研究所、京都大学生態学研究所、広島大学総合科学研究科、長崎大学水産学部、台湾・国立台湾大学、台湾・中央研究院、フィリピン・フィリピン大学

補足 地下水研究の紹介では硝酸と砒素の二大汚染物質に対するテーマをお示ししました。世の中にはこれ以外にもフッ素やホウ素、また有機化合物系汚染など様々な問題が存在しています。特に有機化合物汚染の浄化研究にはCompound Specific Isotope Analysisのような最新の同位体技術が応用され始め早くも10年以上経ちます。地下水を公水と位置付ける国外の状況において本分野の向上と研究熱は凄まじいものがあります。一旦汚染が起こると莫大なお金が動くからです。残念ながら本国ではこうした研究の動きは極めて鈍いようです。今後の我が国における動向についても注視しているところです。

⑦ 海底地下水湧出現象の解明
Understanding the volume and distributions of submarine groundwater discharge (SGD)

内容紹介
 河川や地下水は流域を流下し、最終的には湖や海洋へと流出します。自然界では淡水が地下水を通して直接海岸や海中で湧き出す現象が存在し、このことを海底地下水湧出(SGD: Submarine Groundwater Discharge)現象とよびます。河川流出は地表で目に見える現象なのでその量や質の特徴を手に取って調べることができますが、海底地下水湧出は目に見えない地下や海中での現象のため、その実態や海洋環境に与える影響は良く分かっていません。世界のいろいろな研究者の試算によると、海洋へと流出する淡水全体のうち、地下水が占める割合は数~10%程度であることが多いようです。そもそも、どんなに小さな川にも名前はついているものですが、海岸や海中に湧き出す湧水(淡水)に名前すらついていないものも多いのです。言われてみると不思議なものです。また、海洋へ寄与する淡水の全体量として地下水は河川水と比べ小規模なわけですが、地下水は河川水と比較して相対的に溶存成分に富むため、海洋への栄養補給ルートとしてその重要性が注目されています。
 こうした学術的な注目度と相まって、2000年に入り、水中のラドン濃度を現場で測定することでSGDの分布や量を調べる調査方法がフロリダ州立大学のBill Burnett教授らのグループによって提案されました。我々としても、まず地域流域におけるSGDの量や質的特徴を理解することを興味として2008年頃から調査を行ってきました。これまで秋田県と山形県の県境に位置する鳥海山麓においてSGD調査をBurnett教授らと共同で行い、興味深い結果を報告しています。現在は八代海においてマクロスケールでの研究を進めており、今後も熊本近隣地域を中心に詳細なラドン観測に基づいたSGDプロセスを明らかにしたいと考えています。
研究資金
H17-22年度 人間文化研究機構連携研究
H22年度 財団法人交流協会研究助成(技術交流専門家事業),
H22-26年度 人間文化研究機構連携研究
H23-27年度 文部科学省特別経費
学外共同研究(共同で論文作成したもののみ)
総合地球環境学研究所、アメリカ・フロリダ州立大学

以下、活動休止中

⑧ 河川水質変化メカニズムに関する地球化学的研究
Assessment of river water quality using geochemical tools

内容紹介
 山地で降った雨が河川における水の流れを作り出し、やがて流下するにつれて地質物質との反応や水質の異なる河川の混合などを経て水質が変化します。水質変化は、農業、鉱山活動、都市化などの人間活動によっても起こっています。こうした河川の水質変化メカニズムを、水質分析や同位体トレーサー法を通して研究してきました。河川水の水質形成メカニズム研究は森林研究においても盛んにおこなわれています。本研究では森林から流出域を含む流域全体での研究を行っているため、これとはスケールの異なる研究となっています。また、前に述べた地球の炭素循環を軸とした研究ストーリーとも異なり、人間活動が及ぼす流域河川の水質変化を評価する特色の強い研究と言えます。同位体トレーサー法を用いて河川水質と生態との関係を紐解く研究も行ってきました。現在特に継続しているテーマはありませんが、興味のあるテーマがまた出てくれば研究を再開できる環境が整っています。
研究資金
H17-22年度 総合地球環境学研究所プロジェクト
学外の研究協力関係
総合地球環境学研究所、ブラジル・パラ州立大学

⑨ アジア地域沿岸域における重金属汚染史の解明
Reconstruction of heavy metal pollution history in Asian megacities using costal sediment

内容紹介
 河川によって運ばれた物質は堆積物として沿岸域の海底下で堆積します。重金属等の元素は堆積物粒子に沈着する特性を持つため、流域において河川経由で運ばれてきた汚染物質もまた沿岸堆積物中に堆積します。したがって、流域における重金属汚染の動向を調べるためには溶存体としてではなく、物質が最終的に寄せ集まる内湾などの沿岸堆積物に注目し、固体中に沈着もしくは再結晶化している物質をターゲットにする必要があります。欧米や日本のような先進国では1970年当時から、①越境大気汚染が日本列島に及ぼす影響評価の紹介欄で触れた方法と同様のアプローチで、沿岸柱状堆積物を用いた重金属汚染史の解読が盛んにおこなわれてきました。しかし、近年発展目覚ましいアジア新興国における汚染の現状についてはまだ十分に調査がされてきたとは言えない状態にありました。
そのような状況に狙いをつけ、2006年からアジア各国地域(タイ・バンコク、フィリピン・マニラ、インドネシア・ジャカルタ、台湾・台北、大阪)の沿岸堆積物の採取調査を行い、現状の良くわかっていなかった地域における汚染史の解読研究を進めてきました。この研究は既に2010年頃には終了し、行った調査の結果は学術誌で報告済みです。その後もアジア都市沿岸域では研究例も蓄積されてきたので細野研の活動としては現在休止状況です。ただし、調査が行われていない地域もあるにはありますし、アジア汚染史についてのreview workもまだ少ないので、今後の研究の進展について興味を持って見守っているところです。
研究資金
H18-19年度 特別研究員奨励費(日本学術振興会)
H17-22年度 総合地球環境学研究所プロジェクト
学外共同研究(共同で論文作成したもののみ)
高知大学海洋コア総合研究センター、総合地球環境学研究所、広島大学総合科学研究科、長崎大学水産学部、東京JICA研究所、台湾・国立台湾大学、台湾・中央研究院、フィリピン・フィリピン大学、インドネシア・水資源局

番外編:かつてはこんな研究をしていました!
Previous study in the field of petrology, mineral resources, and cultural property study during the year 1997-2005

Petrology: Intermediate to silicic magmatisms are distributed commonly in the back-arc side of convergent margins, and are associated with hydrothermal deposits throughout the world. The origin and evolutionary process of volcanic and granitic rocks and genetical connection between volcanic rock and hydrothermal deposit have been investigated using Sr (strontium)-Nd (neodym)-Pb (lead) isotope tracers in southern Kyushu, Japan. Stable isotopes were successfully used to distinguish diverse regions contributing to the systems such as oceanic slab, slab sediment, mantle wedge, and crustal material from the lower to upper crust. We have reported results of these studies in several journal papers.

Mineral Resources: Source and genesis of gold- and silver-bearing hydrothermal deposits have been investigated using Sr-Nd-Pb isotope tracers. During the last century, hydrothermal ore forming fluid in the convergent margin have been thought to be derived from water circulated in the shallow crust (1-3 km depth) such as meteoric water and/or magma water. However, we found at the Hishikari world-class hydrothermal gold deposits that the Deep Crustal Fluid, which might be generated in the deeper crust of 10 to 30 km depth, contributes to this system as the important factor creating ore deposits. To understand the spatial distribution of this fluid and the contribution to mineral deposit, gold- and silver-bearing quartz and adularia veins and hot spring water, distributed in wide area in southern Kyushu, were examined. Better understanding of the Deep Crustal Fluid could supply important information for resource exploration and clues for the comprehension of earthquake mechanism.

Cultural Property Study: The Angkor monuments in northwestern Cambodia, which are primarily made of sandstone, are suffering from deterioration due to salt weathering. In order to elucidate the sources of the salts and salt weathering process, we have analyzed bulk chemical compositions and S (sulfur) and Sr (strontium) isotopic ratios for the salts and surrounding environmental materials. The isotopic data suggested that bat guano is related to salt weathering. Our study has demonstrated that removal of these animal excrements is essential for future conservation of these monuments.

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